あなたの会社は『役職』派?『さんづけ』派?それぞれのメリットとデメリット。

社員

取引先の豊田部長、「豊田さん」って社内で呼ばれていましたよ。
営業の僕にも、できれば「豊田さん」と呼んでほしいって言ってました。

社長

そういう会社、増えてきたよね。
なんでだろう。何か意味があるのかなぁ?

あなたの会社では、役職者を社内で何と呼んでいますか?
「社長」「専務」「部長」、はたまた「○○さん」でしょうか?

会社であれば、役職のある人を役職名で呼ぶことが自然なように感じますよね。
しかし、最近では大きい会社ほど、役職名ではなく「○○さん」と呼ぶケースが増えています。
これには、いくつか理由がありそうです。

今回は、この役職名で呼ぶこと、「さん」づけで呼ぶことのメリットとデメリットを少し整理してお伝えしたいと思います。
どちらにも一長一短があります。
それらを把握した上で、それぞれの会社に適した呼び方をしてもらえればいいなと思っていますので、「そんな考え方もあるのかー」程度に軽く読み流して頂ければと思います!

なぜ最近、「さん」付けで呼ぶ企業がふえているのか?

「さん」付けが、今はスタンダード

Yahoo! JAPANが2022年6月に「企業に勤めている男女2000人(正社員、パートなど)」を対象にアンケート調査を実施しました。
「現在勤める企業の社内で、上司のことをどのように呼びますか」と聞いたところ、「『さん』付けで呼ぶ」が55.0%「役職名で呼ぶ」が45.1%で、およそ10ポイント差で、「さん」付けが上回りました。

『さん』付けが半分以上となり、今は「さん」づけの方が常識となっているようです。

次に、会社の創業年別に確認したところ、「さん」付けで呼ぶ企業の比率は、『創業3年以内』の企業では61.5%、『創業50年以上』では49.9%。
比較的若い企業において「さん」付けが多くなっているということが分かっています。

トップダウンかボトムアップか

創業が比較的若い企業の特徴は、新しいことに挑戦するというところです。
失うものが少ないので、ワンチャンを狙って斬新なアイデアやユニークな発想でビジネスに取り組みます。

面白いアイデアが必要なので、従業員全員が色々とアイデアが出せるように、より「フラット」な組織を目指すことが多いようです。
上司や部下の肩書にこだわってしまうと、顔色を窺って斬新なアイデアが出にくくなりがちですからね。
いわゆる「ボトムアップ」型に近い感じです。

一方、創業年数が長い企業の場合、その業界である一定程度の地位を保持していることが一般的です。
その場合、できるだけ危険を避け、リスクを取ることを嫌う傾向があります。
その結果、ある程度間違いのない指示・方針を末端まで浸透させることが大切と考えるんです。
いわゆる「トップダウン」型の組織です。

昭和の時代の企業は、ほぼ例外なく「トップダウン」型でした。
それが、時代の変化とともに「ボトムアップ」型、さらには「分散」型へと、多様な組織形態になってきています。
「さん」づけで呼ぶ企業が増えているというのは、ちょうど今が、その変換点ということなのかもしれません。

「さん」づけで呼ぶことのメリット

「さん」づけで呼ぶことのメリットは何でしょうか。

いくつかありますが、僕は以下のようなことがあげられると思います。

「さん」付けで呼ぶことのメリット

心理的な距離感が近くなるため、上司、部下関係なく率直な意見交換がしやすい
・その役職を離れても、本人および周囲が気を遣ったり、モチベーションが低下するのを防ぎやすい
・役職者がある種の『権力』主義に陥ることを防止しやすい

一番大きなメリットは、『心理的安全性』が担保しやすいというところです。
『社長』や『部長』に意見するのは、一社員の身ではちょっと身構えてしまうところがありますよね。
しかし、『○○さん』であれば、肩書で呼ぶよりも心理的な距離感がグッと近くなりますので、率直な物言いがしやすい場面もあると思います。

その結果、現場で起きている様々な問題点を迅速に把握することが出来たり、従業員からの新たなアイデアを引き出せたり、従業員のモチベーションを上げられたりと、組織全体が活性化する方向に持っていくことが可能です。

また、大きな企業などでリスクとしてあげられることの1つに、その役職者の役職が変わった際の対応があります。
課長が部長になった、くらいであればいいのですが、部長が平社員に左遷、みたいな時にはどうでしょう。
今まで「部長」と呼ばれていた人が、急に「○○さん」となった時、本人のモチベーションが落ちることが予想されます。
また、周囲の人も、名前を呼ぶ際に何かと気を遣う場面もあったりしますね。
最初から「○○さん」と呼んでいれば、その点のダメージが軽減されることが期待できそうです。

さらにもうひとつ。
「○○さん」と呼ぶことで、その人個人と向き合っている感覚が強くなります。
『課長』だから手伝おう、というだけではなく、『○○さん』だから手伝おう、という感覚です。
このような会社に限定しない連帯感が強ければ強いほど、当然組織としての連帯感もより強くなることと思います。
たとえその人が役職を離れたとしても、違和感はなくなるはずですよね。

大きな会社では、降格・移動人事等は日常茶飯事です。
そんなこともあって、大きな企業ほど「さん」づけを積極的に導入している面があるのかもしれません。

最後に、これもリスクなのですが、肩書で呼ばれているうちに、『肩書』=『権力』と勘違いしてしまうケースが出てくるという点です。
本来、『部長』や『課長』は、組織の中ではあくまで『役割』であり、そのことによる人間的な上下、つまり『身分』の差はないはずです。
しかし、『部長である私の方が偉いのだから』とか、『課長である私の意見が絶対正しい』みたいな、非常に閉塞感のある組織を作りかねません。

結果、新規のアイデアは潰され、組織の新陳代謝は妨げられます。
さらに悪い方に働くと、その役職を守るために他者の足を引っ張る輩も出てきやすくなるかもです。
「さん」づけによるフラットな組織であれば、その点の防止にもなる、というのがメリットです。

役職で呼ぶことのメリット

次に、役職名で呼ぶことのメリットです。

これも色々ありますが、大きくは以下の通りです。

役職名で呼ばれることのメリット

役職で呼ばれるたびに、役職者自身が責任感を感じ、モチベーションが高まる
・(一部の)取引先に軽んじられない
・組織内の『なあなあ』な雰囲気を払拭し、指示命令系統を機能させやすい

役職名で呼ぶことの一番のメリットは、『役職者自体が、呼ばれるたびに自身の役職を実感し、責任感を増す』というものです。
安易に「さん」づけをすることは、『無責任な部長』『無責任な課長』を生み出しかねないという危惧があります。
「○○さん、○○さん」と、役職者もそうでない人も同列に置くことで、「みんな一緒、みんなで決めよう」という機運が高まるからです。
責任ある人間が、常にその責任を感じながら業務に当たることができる、という部分が最大のメリットです。

次に、取引先との関係です。
取引先が、社内で「さん」づけをしている場合は良いと思うのですが、役職名で呼び合う組織であった場合、「さん」づけで役職者を紹介するのは、やや相手に軽んじられやすい傾向があります。
なぜなら、その取引先は『社長』や『部長』といった肩書に価値があるという価値観を持っている可能性が高いからです。
その場合、自分たちと同じく役職名で呼び合う組織に安心感を覚えやすい傾向がありますので、役職名で呼ぶことが機能しそうです。

最後に、役職=管理職ですので、指示・命令系統を機能させる上で、役職名は大いに活躍します
組織の役割が明確になるからです。
また、「なあなあ」な雰囲気の発生抑制にもなります。
上司、部下はお友達ではありません。
もちろん、ある一定程度の心理的距離は近い方が好ましいと思いますが、それが過ぎて「なあなあ」になるのは本末転倒。
組織の規律を重んじるのであれば、役職名で呼ぶことは機能的だともいえそうです。

それぞれのメリットとデメリットのまとめ

ということで、いかがだったでしょうか。

最後に、メリットとデメリットを改めてまとめてみます。

「さん」づけのメリット

・心理的距離感が近くなり、組織内の意見が活性化しやすい
・柔軟な人事制度を組みやすい
・権力主義に陥りにくい

役職名のメリット

・役職者が責任感を持ちやすい
・(一部の)取引先に軽んじられにくい
・『なあなあ』な雰囲気を払拭し、指揮命令系統を機能させやすい

見て頂くと分かると思いますが、片方のメリットは、もう片方のデメリットになっています。

例えば、「さん」づけの心理的距離感が近いというメリットは、行き過ぎると『なあなあ』な雰囲気を作り出してしまいます。
これは、役職名で呼ぶことで『なあなあ』な雰囲気を払拭するというメリットの裏返しでもあるんですよね。

こうして見てみると、一概にどちらがいいかどうかという議論ではなく、「さん」づけをした方がいい企業、役職名で呼んだ方がいい企業がある、ということが言えそうです。

僕的にザックリいうと、

ザックリいうと、

・心理的安全性を確保して、1人1人を尊重しながら進めていきたい企業は、「さん」づけ。
・役職者に強い責任感を持ってもらい、ある程度トップダウンで進めていきたい企業は、役職名。

というような感じでしょうか。
現在、「さん」づけ企業が増えているというのは、この心理的安全性を重視していたり、特定の役職者だけに重い責任を押し付けたりしない風潮が反映しているのかなーと個人的には思っています。
みなさんの会社は、どちらのタイプでしょうか?

というわけで、今回は、『組織内での役職者をどう呼ぶか』みたいなテーマで書いて見ました。

どちらの呼び方が良いとか悪いとか言うわけではなく、組織内に与える影響を考えて使ってもらえればと思っています。
「そんな、呼び方一つで大袈裟な」と思う方もいるかもしれませんが、こういった無意識化に入り込む影響は、結構バカにできないんですよ。
ご自身の組織を見直す何かしらのヒントになればいいなと思います。

最後まで読んだ頂き、ありがとうございました!
それでは、また!

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