新たに追加!インボイス制度3つの緩和処置
インボイス制度、どんな変更点があったの?
まだ登録していないけど、いつ登録するのがいいのかな?
なんか、少しでもお得になる情報ないのかな?
いよいよインボイス制度が今年(令和5年)の10月から始まります。
登録すべきかどうか、まだ迷っている免税事業者の方も多いのではないでしょうか。
と、そんな中、昨年末に国税庁からインボイス制度についての緩和処置が発表されました。
今回はその中でも特に影響の大きいもの3点について、解説します。
その上で、「結局どういう対応をすればいいの?」ということについて、ずばりお答えしたいと思っています!
免税事業者の方のみならず、課税事業者の方の対策についても触れましたので、ぜひ最後までご覧ください!
ちなみに、「インボイス制度良く分かってないんだけど…」という方は、先にこちらをご覧くださいね。
インボイス制度って何?【うちも登録すべきなの?にお答えします!】
インボイス制度…うちも、それしたほうがいいのかな?というか、インボイス制度って何?今回は、こんな悩みにズバッとお答えいたします! 分かりやすさを最優先!これを読めば、『どんな制度なのか、どんな事業者が登録申請すべきなのか』を理解できますので、迷っている方はぜひ読んでみてください!
《30秒でわかる、この記事の内容》
令和4年12/23の税制大綱で、インボイス制度の登録についての緩和処置が発表されました。
大きくは3つです。
①令和5年10/1~インボイス制度を活用する場合、令和5年9/30までに申請を済ませればOK
②インボイス制度が始まってから3年は、納める消費税はもらう消費税の20%分だけでOK
③1万円以下の取引は、インボイスの保存義務なし(帳簿だけでOK)
中でも、①が大きいところで、登録までもう少しだけ猶予が出来ました。
免税業者の方が、今後取り得る対応は次の3つです。
①得意先にお願いして、免税業者のまま受け入れてもらう
②軽減処置の20%を活用する
③簡易税制を活用する
それぞれにメリットとデメリットがありますので、詳細は記事の内容をご覧ください!
今回の内容
- 新たに追加!インボイス制度3つの緩和処置
①インボイス登録の申請は9/30まででOK
②納める消費税は、『売上でもらう消費税の20%』でOK
③1万円以下の取引は、インボイス保存なし(帳簿のみ)でOK - 対応はどうしていくべき?
①免税業者の取るべき対応3つ
②課税業者の取るべき対応2つ - 最後に注意点
ただでさえ、ややっこしくて嫌になる制度ですが、今回の軽減処置をうまく使って、すこしでもお得に活用していきましょう!
新たに追加!インボイス制度3つの緩和処置
こちらが、今回の内容が書かれた「令和5年度税制改正の大綱」の抜粋です。
四 消費課税
1 適格請求書等保存方式に係る見直し
(1)適格請求書発行事業者となる小規模事業者に係る税額控除に関する経過措置
① 適格請求書発行事業者の令和5年 10 月1日から令和8年9月 30 日までの日の属する各課税期間において、免税事業者が適格請求書発行事業者となったこと又は課税事業者選択届出書を提出したことにより事業者免税点制度の適用を受けられないこととなる場合には、その課税期間における課税標準額に対する消費税額から控除する金額を、当該課税標準額に対する消費税額に8割を乗じた額とすることにより、納付税額を当該課税標準額に対する消費税額の2割とすることができることとする。
(省略)(2)基準期間における課税売上高が1億円以下又は特定期間における課税売上高が5,000万円以下である事業者が、令和5年10月1日から令和11年9月30日までの間に国内において行う課税仕入れについて、当該課税仕入れに係る支払対価の額が1万円未満である場合には、一定の事項が記載された帳簿のみの保存による仕入税額控除を認める経過措置を講ずる。
(3)売上げに係る対価の返還等に係る税込価額が1万円未満である場合には、その適格返還請求書の交付義務を免除する。
(省略)(4)適格請求書発行事業者登録制度について、次の見直しを行う。
(省略)(注)上記の改正の趣旨等を踏まえ、令和5年10月1日から適格請求書発行事業者の登録を受けようとする事業者が、その申請期限後に提出する登録申請書に記載する困難な事情については、運用上、記載がなくとも改めて求めないものとする。
「令和5年度税制改正の大綱」より抜粋
はい、読むのめんどくさい^^
大丈夫、簡単に3つにまとめました。
インボイス制度3つの変更点
①インボイス登録の申請は9/30まででOK
②納める消費税は、『売上でもらう消費税の20%』でOK
③1万円以下の取引は、インボイス保存なし(帳簿のみ)でOK
もう少し色々あるのですが、大きく影響のあるのは上の3つです。
詳しく知りたい方は、国税上のホームページでご確認ください。
それではそれぞれを詳しく見ていきましょう!
【緩和処置その①】インボイス登録の申請は9/30まででOK
インボイス制度は、令和5年10/1から始まります。
この開始から登録事業者になるためには、これまで『令和5年3/31』までに届け出をして、登録完了しなければいけませんでした。
これが、『令和5年9/30』までに登録完了すれば『実質』OKとなります!
「ん?『実質』ってどういう意味?」
はい、本来『原則』は、令和5年3/31までに登録をしないといけません。
しかし事情がある事業者に限り、9/30までに届け出をすればOKという例外規定があります。
ただし、これを利用するには、該当の項目にその理由を記載する必要があったんですね。
これが、なんと今回の見直しで、理由不記載(未記入)でもOKとなりました!
なので『実質』9/30まででOKということです。
少し期間に余裕がありますので、まだ検討中の方は、もう少し様子を見てもいいかなと思います。
【緩和処置その②】納める消費税は、『売上でもらう消費税の20%』でOK
次は、納税額に係る負担軽減措置についてです。
ここは少し誤解しやすい部分なので、例を出しながら説明します。
おさらいですが、『 納める消費税 = もらった消費税 ー 払った消費税 』です。
例えば、70万円の商品を仕入れて、100万円で売った場合を考えてみましょう。
通常の納税消費税額
売った際にもらった消費税 =100万円×10%=10万円
仕入れた際に支払った消費税=70万円×10%=7万円
納める消費税= 10万円 ー 7万円 =3万円
これが、今回の軽減処置を利用すると、こんな感じになります。
軽減処置を利用した納税消費税額
売った際にもらった消費税 =100万円×10%=10万円仕入れた際に支払った消費税=70万円×10%=7万円
売った際にもらった消費税×20%=10万円×20%=2万円
納める消費税= 2万円
いかがでしょうか。
仕入額が少ない高粗利商品ほど、恩恵が受けられそうです。
また、もともとあまり仕入に依存しないスキル系(プログラマーや工賃メイン業など)のお仕事では有利になりそうですね。
ただし、この軽減処置を利用するには、以下の条件が必要です。
①前々年度の年間課税売上が1000万円以下の事業者であること
②令和5年10/1~令和8年9/30の属する課税期間内であること
はっきり言うと、「今までの免税事業者が対象だよ」というわけですね。
そして軽減処置は3年間。
それを過ぎると、本来課税に戻りますのでご注意ください。
また、業種によっては、必要以上の消費税を支払ってしまう危険性もありますので注意が必要です。
例えば、売上金額に占める仕入金額の割合がメチャメチャ大きい卸売業などの場合です。
(当管理人のラプターライナーもそうです><)
この場合は、本来課税や簡易課税制度を利用した方がお得かもしれませんので、そちらも併せて検討してみてください。
【緩和処置その③】1万円以下の取引は、インボイス保存なし(帳簿のみ)でOK
3つ目は、事務負担の軽減措置です。
題名そのままなのですが、取引金額が1万円未満の仕入れについては、インボイスの保存をしなくとも帳簿のみで仕入税額控除が可能となります。
「350円の乾電池とかで、いちいちインボイスとか面倒くさいでしょ?レシートでいいよ。」って感じです。(たぶん)
このほか、1万円以下の返還インボイスも交付しなくていいことになりました。
「返還インボイス…?」
説明します。
返還インボイスとは、簡単に言うと、
「売上返品、値引き、割引きとかしたら、発行しなきゃいけないインボイス」
の事です。
返品なんて、結構日常的に行われていますよね。
そのいちいちに返還インボイス(正しくは、適格返還請求書と言います)の発行が必要なんですよ!
聞いただけで面倒くさい…
これが緩和されるだけで、かなり助かる事業所は多そうなので、よかったなって思います!
対応はどうしていくべき?
ここまでで、今回の緩和処置については分かりました。
それらを踏まえて、今後どうしていくべきなのかをサクッと考えてみます。
免税事業者、課税事業者それぞれの場合で考えてみましたので、ご参考にして頂ければ嬉しいです。
免税事業者の取るべき対応3つ
免税事業者の場合、今後の対応として考えられるのは、次の3つです。
免税業者が取るべき3つの対応
①免税事業者のままで、得意先に受け入れてもらう
②インボイス(適格請求書発行番号)を取って、軽減処置の20%を活用する
③インボイスをとって、簡易課税制度を利用する。
中でも①は、一番ハードルが高いです。
得意先に消費税の負担を押し付けるようなものですからね。
ただ、ご自身が『他で替えがきかない』ようなスキルや商品や人間関係をお持ちであれば、十分可能だとは思います。
②の軽減処置の活用も有力な方法だと思います。
ただ、先ほどの説明でも触れましたが、場合によってはより多くの消費税を負担することもありますので、ご自身の職種や仕入状況をよく考えて取り組んでみて下さい。
③の簡易課税制度に関しては、例えば卸売業の方は、みなし課税率が10%なので、今回の軽減処置よりも恩恵が大きいです。
上手く適切なものを利用するようにしましょう。
課税事業者の取るべき対応2つ
課税業者に関しては、すでにインボイス制度へ移行が決定していますので、逆に免税業者に対して今後どうのように対応するといいのかについて考えてみます。
対応として考えられるのは、次の2つです。
課税業者が取るべき2つの対応
①免税業者の消費税をかぶる
②値下げ交渉 or 取引をやめる
①は、できれば避けたいところですよね。
しかしながら、取引先の免税業者が唯一無二だった場合、やむを得ない場合もあるかもしれません。
(他社との差別化のために)
でも安心して下さい。
その場合でも、実は6年間、経過処置による軽減制度があるんです。
経過処置による軽減制度
1.インボイス制度開始後3年間は、免税事業者からの請求書でも80%控除が可能
2.その後の3年間では、免税事業者からの請求書でも50%控除が可能
ですので、重要な取引先が免税事業者だった場合で、「どうしようかなー」とお悩みなら、少し時間をかけて検討してみてもいいかもです。
確かに負担は痛手ですが、80%控除(つまり仕入金額の2%分の金額負担)なら、何とか1年位やり過ごせるのではないでしょうか。
②は、値下げ交渉です。
消費税を負担する分、実質値上がりになるのですからね。
ただし、独占禁止法に抵触する可能性があるので、その辺はご注意ください。
たとえ免税業者といえ、消費税を請求する権利はあります。
なので、「消費税を請求するのやめてくれませんか?」などと言ってはいけません。
独占禁止法の中の『有利な立場を利用した権力の乱用』に当たる可能性が出てきます。
また、同様に「消費税分、値下げしてください」も危険です。
相手の権利を認めない一方的な押し付けになる可能性が高いからです。
これらを考慮した上で、正当な理由による値下げ交渉(社内財務状況や取引ボリューム等)をするのはありだと思います。
また、どうしても厳しいと感じる場合、取引をやめる選択肢も考慮すべきかも。
同じような商品を提供してくれるインボイス登録業者がいるかもしれませんからね。
その辺は付き合い等々あると思いますので、慎重にご判断いただきたいと思います。
最後に注意点!
お疲れさまでした。
以上が今回の追加された軽減処置の内容です。
最後にインボイスの申請期限に関する注意点だけ、サクッとお示しして終わりにします。
インボイス申請期限に関する注意点
申請は、遅くとも7月末までに行うこと!
「あれ?冒頭で9/30までっていってたよね?」
はい、確かに9/30までに申請をすれば、10/1からインボイス発行事業者として登録されます。
しかし、インボイス番号が発行されるのは、国の手続きが終わってからなんです。
この手続きは、最大1か月半かかります。
ですので、9/30ギリギリに申請をすると、
「9/30までに申請はしたけれど、10/1からの請求書にインボイス番号が打てない」=「消費税の控除が認められない」
ということが起こってしまうんです。
この事態を避けるためにも、遅くとも7月末には申請を済ませておきましょう。
ちなみに、申請には『e-TAX』と『郵送』の2つ方法があります。
・e-TAX - PCで申請。登録にかかる期間は約3週間
・郵送 ー 書式をダウンロードして郵送。登録にかかる期間は約1か月半
国税庁のリンクを付けておきますので、気になる方は見てみてください。
最後に個人的な意見ではありますが、まだ申請していない事業者さんは、申請はギリギリまで待った方がいいかもしれません。
というのも、このインボイス制度は今後も変更する可能性があるからです。
後出しで好条件が出てきた場合、すでに申請済みだったら取れる手段が限られてしまう可能性もあります。
まあ、ほぼほぼ決まってきているなぁとは思いますが、念のため、今後の動きにも注視していきましょう!
というわけで、今回は『新たに追加されたインボイス制の緩和処置3つ』について説明してみました。
わかりにくいところがありましたら、ぜひお問い合わせください。
何か1つでも、皆さんの参考になれば嬉しいです!
よろしくお願いいたします!
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